テレビ・新聞・雑誌の報道の違いを「阿武町4630万円誤送金事件」から考える

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山口県の人口3000人の町がここまで全国で注目されるとは、誰もが思っていなかったことでしょう。4月8日に誤って一つの口座に振り込まれた4300万円は、その大部分が何とか取り戻せる法的な算段がついたところ。逮捕された24歳の男性には、〈自主的に起こしたことじゃないのに〉などと擁護の声も聞こえてきますが、連日の各社の報道によって見えてくる男性の人格からは、その声も少しずつ小さくなってきているようにも見えます。

 

さて、このような特殊な事件であるが故、メディアごとの報道の仕方にはだいぶ違いが表れたように思います。どこの報道が良くて、どこの報道が悪いなどと断ずるわけではなく、テレビ・新聞・雑誌で切り口がどのように異なるのかを見ていきたいと思います。

 

新聞

まずは新聞の報道から見ていきます。もちろんそれだけではないのですが、報道において、“余計なことは報じない” “事実を淡々と報じる”というイメージに最も違いのが、新聞です。

そのスタンスは今回のような前代未聞の事件でも変わらず、「代理人弁護士の話によると、口座の金は全てオンラインカジノで使ったと話しているという」「振り込んだ9割の返還を法的に確保したと町長が明かした」など、いつ・どこで・何が起こったのかという報道に終始しています。

これは読者に誤解を与えることが比較的少ないですし、決して悪いことではないのですが、このような“変わり種”の事件だと、やはり一般市民からするとどこか物足りなさを感じてしまいます。〈これだけの大金を振り込まれても返さない男とはどんな人物なのか〉〈町や銀行の不手際をもっと深く知りたい〉という点こそが、多くの方の本音でしょう。取材現場でも、悪いことをした人を“晒すための定番アイテム”である「卒業アルバム」も、新聞社はそこまで強くは追い求めず、また得られたとしても紙面には反映しないことが多いです。お作法的に、一番きれいな形で取材し、報道するのが新聞社といえるでしょう。

共同通信や時事通信などの通信社も同じ立ち位置ですね。全国紙の中でも、読売新聞や朝日新聞等は現場での取材もしっかり行いますが、日経新聞はこのような「社会面」的な話題は、自社ではほとんど現場取材はせず、通信社からの情報を頼っています。産経新聞くらいの規模だと、ここまでは手が回せていないかもしれません。毎日新聞でギリギリ人を出せているくらいでしょうか。

 

雑誌

新聞と最も対極な立場にあるのが、週刊誌をはじめとした雑誌メディアです。報道の自由度が比較的高く、ある程度の裏がとれれば、“疑惑”などでも報じることができるため、このような事件の場合、最も「知りたい」に応えられるのが、週刊誌のように思えます。

週刊文春は、〈男性は大麻栽培のために古民家に移住していた〉などといち早く報じ、週刊新潮も、〈ギャンブル漬けの日々を過ごしていた〉といったことを早い段階で報じています。共に小学校時代の卒業アルバムにあった「将来の夢=造幣局の職員」「地球最後の日に何をする?=持ち金を使い果たす」といった部分の写真を掲載し、男性が小学生時代から金に執着していた様子を詳述しています。このように、新聞からするとお作法的に美しくない領域まで報じられるのが、週刊誌の強みでしょう。

なお、こうした事件ものですと、現場取材を行うのは、週刊文春、週刊新潮、週刊女性、女性セブンあたりでしょうか。

 

テレビ

今回の事件に関しては、新聞と雑誌の中間的な立ち位置にあるといえるでしょう。週刊誌ほど“何でもかんでも書く”わけではないのですが、新聞ほど“かっちりとした情報”しか出さないわけではありません。

例えば、テレビ各社も、卒業アルバムの情報などは早い段階から出していました。ただし、卒アルの情報に関しての週刊誌との違いは、「逮捕されてから報じている」という点です。持ち逃げしている男性が逮捕されたことで、“犯罪者”として扱う一定の理由ができ、ここまで踏み込んだ情報だったり、あるいは本人の写真だったりを報じるようになったのです。

さらに、ワイドショーとなれば、週刊誌ほどの自由度とまではいいませんが、それに近い自由度のもとで事件を報じることができます。その意味で、今回の事件でテレビが伝えてくれた情報には、厚みがあったように思えます。

ちなみに、テレビの場合、現地の地方局のほか、キー局の「一番組」が現場に来ることがあります。局の記者ではなく、某ワイドショーや報道系番組などが独自に取材に来ることがあるということです。Twitterを見ると、よく番組ごとにリプライを送って取材依頼をしていますよね。あのイメージで、番組が独立して取材を行うことがあるのです。

 

このように、一つの事件に対しても、メディアごとに取り組み方が異なります。気になる方は各メディアの報道をご覧になってみてください。ネット上の無料の記事や、Youtube等でもある程度の情報が拾えると思います。こうして各社の報道との向き合い方の違いについて知っておくことは、面接できっと役に立つはずです。

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