「型にはまった受け答えに陥ってしまうから、就活本は買ってはいけない」。
私自身もよく言われていた言葉です。一つの企業に対して何百人、何千人、何万人が応募するわけですから、選考する側も、求めているのは個性であり、記憶に残らないような“ふつうの人”はいらないわけです。その意味で、型にはまってしまうような行為は避けるべきだというのはもっともだと思います。
就活本は読むべき
しかし私は、就活本は読むべきだと考えています。なぜなら、「自分の引き出しを増やせるから」。最初から「この本の情報をもとにエントリーシートを書こう」「この本の通りに面接で回答しよう」などと考えて読むのはもちろんナンセンスなのですが、あくまでも参考程度に、情報の一つとして吸収する分には非常に有意義だと、私は考えています。
一冊の本をまとめるには、それなりの労力がかかっています。出版社も慈善事業でやっているわけではないですから、「売れるため」に必死に有益な情報をまとめてつくった一冊一冊が書店に並んでいるのです。他社の本と同じようなものを作ったって売れませんから、練りに練った独自の情報を盛り込んでいます。本記事も含めて、ネットに上がる記事とは、労力も費用も全く異質なものなのです。
我々は、この努力の結晶ともいえる本を、“参考程度に”読むのです。一冊から、「こんなアピールの仕方ありだな」とか、「この表現使えるな」とか、「こういう方向性でいくのもありだな」とか、何か一つでも見つかるだけでも、価値があることだと思います。当然、それをそのまま転用するのは、本末転倒です。あくまでも”参考程度に”読むことが大事です。
インプット活動の大切さ
就活本に限らず、こうしたインプット活動は非常に重要です。個性を出すために、自分独自の言葉でアピールをしたいところですが、ゼロからそれを生み出すのは至難の業。やはり色々な人の声をインプットし、それらを自分のものとしてアレンジするというのが、豊かな表現を練り上げる一番の近道であり、現実的な方法であると思います。
例えば、企業の説明会に行くと、若手社員や、前年の内定者が来てくれるケースがありますよね。これはものすごく良い機会で、彼らが何を話して内定を獲得したのか、具体的に聞くべきです。私も、某大手総合商社の内定者が何気なく放った一言をアレンジして、自己PRをつくっていました。
このように、就活でのアピールとは、あらゆるインプットの積み重ねで、独自のアピールポイントを探っていく作業ともいえると思います。自分の中だけで思考を繰り返しても、たどり着けるゴールは限られているでしょう。だから、特に就活の早い段階では、とにかく色々な人の話を聞き、多くの就活本にも目を通し、ネットの記事や書き込みもしっかりチェックするというのが大事になってくると思います。こうして自分ならではの話をつくりあげていく上で、そのインプット活動の一つとして、模範解答的な情報を収集するために就活本を読むのです。
今の就活本は、かなり実用的なものも増えてきています。いかにも”マニュアル感”のある本なら、今の時代売れませんからね。マニュアル的な意味での模範解答ではなく、実用性のある模範解答がふんだんに載っている本もたくさんありますので、ぜひ参考にしてみてください。
オリジナリティとは、”型をくずすこと”
多くの“模範解答”に触れることで、自分の基礎ができあがるという点も大きいでしょう。一度定石を身に着けた上で、それを崩すことで自分のオリジナリティをつくりあげていく。基礎がないままに自由にやるだけでは、それは個性ではなく、独りよがりなもものにしかなりえません。必要な型を身に着けてから、それを崩すことこそが真のオリジナリティといえるでしょう(昔、東進衛星予備校で世界史講師の荒巻先生が話していました)。個性をいかに伝えるかが問われる就活において、一つの重要な考え方だと思います。
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